デスクワークで起こる肩こりの原因
デスクワークで起こる肩こりの原因
肩こりはもはや国民病といえるほど、多くの人の悩みとなっています。
厚生労働省の調査によると、体のさまざまな不調のうち、女性は肩こりが悩みの1位、男性では2位となっているようです。
肩がこると、自分でもんでみたり、マッサージを受けたり、市販の薬を飲んだり、シップを張ったり、ストレッチを行ったりすると思います。
悪いことではありませんが、一時的にスッキリしてもすぐに元通りになることもあります。
肩こりを解消するためには、肩こりの原因を知ることが大切です。
それがわかれば、肩こりの予防法や改善方法も自然と理解できるはずです。
☆肩こりとは病名ではなく症状のこと
肩こりとは、病名ではなく症候(症状)のことで、首筋、首の付け根から肩にかけての違和感(張り、こわばり、こり)の総称です。
おもに肩まわりの筋肉の血行が悪くなることで起こります。
たかが肩こりと放置しておくと、痛みに変わり、さらにひどくなると頭痛や吐き気を伴うこともあります。
肩こりのためにイライラしたり、仕事がはかどらなかったり、日常生活に支障をきたすことも珍しくありません。
特にデスクワークをしている人の多くは慢性的な肩こりに悩まされています。
☆肩こりは二足歩行を行うようになった人類の宿命?
よく、「肩こりは人類の宿命である」と言われます。
人の頭の重さは体重の10%が目安です。つまり、体重が50㎏の人なら5㎏、60㎏なら6㎏ほどになるということです。
ちなみに5㎏の米袋を持ってみると、かなりの重さだということが実感できるでしょう。
この重さを支え、前後左右の動きをコントロールしているのが、首から肩にかけての筋肉です。
頭だけでなく、腕の重さも肩にかかっています。
腕の重さは人によりますが片腕で3㎏、両腕で6㎏ほどです。
そのため、肩まわりの筋肉は常に緊張しやすい状態にあります。
人類が二足歩行を行うようになったことで、重い頭と腕を肩だけで支えなければならず、そのために肩こりが生じるようになったと考えられています。
肩こりが人類の宿命といわれるのはそのためです。
☆筋肉が緊張すると肩こりになる
肩こりに関係するおもな筋肉は、「肩甲挙筋」と「僧帽筋」です。
肩甲挙筋は首の後ろ側から肩甲骨につながる筋肉で、腕を持ち上げるなどの役割を担っています。
小さい筋肉ですが、硬くなると肩こりの原因となります。
僧帽筋は首元から肩甲骨、背中の中央部分まで広範囲に広がる筋肉で、頭の角度を保ったり、胴体を固定したりする役割を担う強い筋肉です。
本来なら、それぞれがバランスよく緊張と弛緩を繰り返すことで役に立っていますが、同じ姿勢をとり続けることで、これらの筋肉が緊張した状態が続きます。
その結果として、血流が悪くなって肩こりが生じます。
どの部分に肩こりを感じるかは、人それぞれで、姿勢のクセや普段の動き、体型などによっても異なります。
また、肩こりといっても原因はさまざまで、自分の肩こりの原因を知ったうえで対策をとらなければ、効果がないばかりか逆効果になってしまうこともあります。
☆デスクワークで肩こりが多いのはなぜか
前述のように、デスクワークの方には肩こりが多いです。
デスクワークをする時、どんな姿勢になっているか思い出してください。
ほとんどの人が前かがみの姿勢になってモニターをのぞき込み、両肩をすぼめる姿勢でキーボードを操作していることが多いです。
つまり、体の前方下方向に向かって作業をするので、自然と頭部はうつむきとなり、肩口よりも前に出ることになります。
それが肩や首への負担となります。
この時、僧帽筋などの首や背中の筋肉は頭の位置をキープするために、重い頭を支え続けているのです。
デスクワークは肉体労働よりも楽だというイメージがありますが、動いてないときでも筋肉はがんばっているのです。
そして同じ姿勢をとり続けるということは、筋肉はがんばり続けなければならないということです。
これが長時間続くと、肩こり状態から抜け出せなくなるのは、当然のなりゆきでしょう。
☆悪い姿勢や習慣が肩こりを引き起こす
肩こりの原因が、仕事中の姿勢の悪さにあると考えられるケースは少なくありません。
そして、悪い姿勢を長時間とり続けると、肩こりになってしまいます。
たとえば猫背です。
デスクワークで猫背になって仕事をしている人は多いです。
休み時間には首を折り曲げてスマートフォンを操作している人が多いですが、この姿勢も肩こりになりやすい姿勢です。
また、机や椅子の高さが合っていないと猫背になりやすいです。
ほかにも「足を組むクセがある」「一方の肩だけで荷物を持つ習慣がある」なども、肩こりの原因となります。
炊事や掃除などの家事をするときも、前傾姿勢になりがちです。
悪い姿勢は体のどこかに負担がかかり、その結果、体に歪みが生じ肩こりが起こります。
肩こりや首の痛みの根本的な原因を治さない限り、症状が解消することはありません。
姿勢が悪い場合は、意識して姿勢を整えなければいけません。
☆ほかにもある肩こりの原因
肩こりの原因は、ほかにもいろいろあります。
おもな原因として次のようなことが挙げられます。
・眼精疲労
・筋肉量の低下
・老化 ・運動不足
・自律神経の乱れ
・過度なストレス
・首や肩の骨や筋肉に異常がある場合
・内臓の病気
それでは詳しく見て行きたいと思います。
【眼精疲労】
日常的に、パソコンを使って長時間のデスクワークをする人や、スマホを何時間も見続ける人の多くが眼精疲労に悩んでいます。
集中して画面を見ているうちに、あっという間に時間が過ぎ、目を休める暇がなかったという場合、目の疲労から肩こりにつながることがあります。
また、メガネが合っていなかったり、暗い場所で目を使う作業をしたり、ドライアイなどが原因で眼精疲労になることもあります。
目を酷使すると、目のまわりの筋肉が緊張すると同時に、肩や首まわりの筋肉も緊張し、全身に疲れを感じるようになります。
眼精疲労の症状は頭痛、肩こり、吐き気、イライラ感などさまざまです。
【運動不足】
現代社会は、機械化、省力化が進み、体を動かす機会がめっきり減っています。
学生時代は、特にスポーツをやっていなくても体育の授業などで運動ができていましたが、社会人になると、自分で意識して取り組まなければ体を動かす機会がありません。
そのため、運動不足の人も多くなります。
肩こりを起こすと、肩まわりの血流が悪くなり、酸素や栄養分が行き渡らず、疲れやすくなります。
それを改善するのが適度な運動ですが、運動をする習慣のない人は肩こりが悪化するばかりで、体を動かして血液循環を促すことも必要です。
【筋肉量の低下】 そもそも、日本人は欧米人に比べ骨格がきゃしゃで筋肉量も少ないことから、肩こりが起こりやすい体質でもあります。
少ない筋肉で体の重みを支えなければいけないのに加え、運動不足や加齢による筋肉量の低下で、一層筋肉への負担が大きくなり、肩こりを感じるようになります。
若い頃は筋肉があるので問題にはなりませんが、年をとって肩の筋肉が衰えてしまうと、肩への負担が大きくなります。
中年以降は筋肉だけではなく骨も弱くなるので、肩こりで悩む人も多くなります。
【自律神経の乱れ】
内臓や血管の動きを調整する自律神経が乱れることによって、肩こりが引き起こされるケースもあります。
自律神経は、環境、季節の変わり目、疲労の蓄積、ストレスなどによって乱されることがあるので、予防や改善策として、ゆっくり休んでリフレッシュすることが大切です。
【過度なストレス】
ストレスもまた、体の働きを調節する自律神経に変調をきたします。
その結果として、肩こりになる場合もあります。
さらに、ストレスで気分がすぐれない、疲れが抜けないといった状況ではうつむきがちになり、猫背にもなりやすいことから、肩こりが引き起こされることもあります。
また、重要な仕事を任され、肩に力が入り過ぎて肩こりになるケースも少なくありません。
【首や肩の骨に異常がある場合】
椎間板ヘルニア、頸椎症など、骨の病気による肩こりもあります。
【内臓の病気から来る肩こり】
肩こりは、若い人からシルバー世代まで、ごくありふれた症状ですが、すべての肩こりが筋肉の緊張が原因とも限りません。
風邪をひいても肩や腰が抜けるように痛むこともありますし、狭心症や心筋梗塞など心臓の病気からくる肩こりもありますので、軽視はできません。
こういった特殊なケースもあることを頭にいれておいてください。
以上のように肩こりの原因はさまざまで、予防法も異なります。
しかし、その大半は日常生活の過ごし方に原因があります。
言い換えれば、普段の心がけと努力次第で、肩がこらない体を作り上げることができます。
慢性の症状になればなるほど、生活習慣を見直し、考え方を変えて根本的な治療を行う必要があります。
肩こりがなくなれば、仕事の質も生活の質も改善されること間違いないでしょう。